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EQの開発②方法論その14 EQ開発講座

2012.6.29

今回は「フロー」についてです。

中学受験で成功する子、特に上位校・難関校と言われる学校に合格してゆく子は

学習の場面やテストの場面で例外なく、このフローを体験していきます。

フローとはどんな状況のことを言うのか。

誰でも経験したことがあるはずの、あの忘我の世界のことです。

通常、私達は、行為している自分とそれを見ている(モニターしている)自分と二つの意識が働いていると言われますが、

これが混然一体となった状態をいいます。

三昧の境地という表現もあります。

スポーツ選手は、この状態を「ゾーン」と呼んでいます。

EQの研究者たちは、このフローこそ、EQが最高に発揮された場面の一つだといいます。

勉強でも、スポーツでも、ゲームでも、また絵画や音楽といった芸術の分野でも、

良好な結果を修める人は、間違いなく、人から、集中力があると言われます。

当たり前ですが、人は誰でも、自分の得意分野では集中力を発揮しています。

集中できるから得意なんだとも言えるでしょう。

この集中力が高度に発揮され、同時にリラックスできている状態、つまり情動は良くコントロールされ、

情動の雑音から一切解放された状態がフローだとされます。

神経回路の覚醒も抑制も必要最小限に抑えられ、最高最大の能力を発揮しているにもかかわれず、

消費されているエネルギーは最少だと判っているそうです。

そしてこのフローの中では、内発的な歓喜や効力感、別の言い方をすれば

ある種のエクスタシー・絶頂感が出現している事も判っています。

このEQ開発講座の最初の方で、中学受験生は毎日、格闘技にも似た我慢という試練に立ち向かっていると言いましたが、

それは勉強開始前後の時だけで、実は多くの時間で、ランナーの特権と言われる「ランナーズハイ」と同様な

受験生ハイが起きているに違いありません。

したがって、フローの喜びを知った子供が、もう一度フローを経験したいという気持ちを持ち、

勉強意欲を強くしていくことは、大いに期待されることです。

では、どうしたら、このフローをうまく出現させられるのでしょうか。

フローの研究の第一人者と言われる、チクセント・ミハイリ博士は

立ち向かう課題に関して、「退屈と不安の間のデリケートな範囲で起こる」と結論付けておられます。

つまり、課題が簡単過ぎると退屈してしまうし、難し過ぎると不安になってしまうということでしょう。

親や指導者の腕の見せ所とも言えるでしょう。

また、先の最小限の知的エネルギー(大脳新皮質の活動効率)しか使われないという事実から、

課題の分野または領域については、反復練習がおこなわれ、肉体運動であろうと、知的作業であろうと、

脳の神経回路が効率よく発達していることが必要だとされています。

そして、なによりも、フローの経験をより多く体験する事が、重要だと言われます。

以前お話した、知能の多重性理論を提唱された、ハワード・ガードナー博士は

フローに代表される心理状態の基で行われる学習こそ、最も健全な教育方法の一つだと指摘されています。

私は、七年前、半年間、元ソニー上席常務の天外伺朗先生のご指導を受けたことがあります。

自身の生き方や経営の根幹に関わる、非常に有意義な教えをいただきました。

正にこのフローを中心に、心理学や脳科学や歴史学等々を駆使した斬新な人間学でしたが(あくまでも私自身の解釈ですが)、

その時先生が、フローの効用の広がりとして、強運の獲得にも触れられていたことを、

この項の最後としてご紹介しておきたいと思います。