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まず心がコントロール出来る実感をつかませよう EQ開発講座

2014.5.29

情動の起こる仕組みを教え、どうしたら上手に心をコントロール出来るかも具体的に指導する。

試験を受けている時にパニックになったらどうするか?

そもそもパニックになど陥らないためにはどうしたらよいのか?

 

情動の変化が起こるカラクリですが、基本的に次のように説明されています。

直面している事態の変化から自動的に起こるのではなく、事態の変化と

情動の変化との間にはほとんどの場合、何らかの評価なり理解なりという

認識の段階がある、ということです。

例えば、こんな話がよく例に出されます。

少々込み合っている電車の中。

あなたはドア付近に立っていました。

電車が駅に着き乗客がおり始めた時です。

前に立っていた女性に足を踏まれてしまいました。

ハイヒールの尖った踵だったのか、かなりの痛みです。

瞬間、あなたの心は驚きと怒りの情動の嵐です。

でも、次の瞬間、前の女性を含む数人の人を乱暴に掻き分けて

外に出ようとしている大柄な男性を見て、その情動は、まだ残っている痛み

とは別に、急速に小さくなっていきました。

そして、改めて周囲を見回すと、自分の後ろには空間の余裕が

まだまだあったことに気が付き、今度は少し恥ずかしいような情動が

こみあげてきたのです。

いかがですか?

だいたい似たような心の変化をみなさん想像できるのではないでしょうか?

では、最初の驚きと怒りは、足を踏まれたという事実から自動的に起きた

のでしょうか。

踏まれた痛みが自動的に呼び起こしたのでしょうか。

その後の情動自体の変化をみると、どうもそうではないようです。

踏まれた瞬間、異常事態発生!と認識し、同時に、踏んで痛みを与えたのは

この目の前にいる女だ。人の足を踏みつけるなんてとんでもない奴だ。

断じて許せん!となった訳です。

しかし、次の瞬間、真犯人は別にいて、前の女性も突き飛ばされた側で、

自分の足を踏んだのも、不可抗力でやってしまったもので、彼女には

責任は無い。彼女は悪くはない。

と怒りは急速に収まった訳です。

さらに、踏まれたのは、もっと間隔を空けて立てたのに、そうしなかった

自分にも責任があると思うに至り、すぐ人のせいにする自分を恥じたのです。

いろいろ異論も出てくるとは思いますが、要は、事態発生と情動発生の間に

何らかの評価が行われているということが極めて大事なことなのです。

何故なら、情動の発生が自動ではなく、評価が起こすのであれば、その評価

の段階で何らかの手を打てば、情動をある程度コントロールできる

ということになるからです。

子供たちには、こうした例えを幾つか話し、情動に対して人間は決して

無力ではないことを教えます。

その上で、具体的な対処を考えさせてゆくのです。

例えば、試験中にパニックになってしまった時の様子などを基に

すると、教え易いです。

解けそうもない問題を見た瞬間、頭が空っぽになってしまった。

その時、一体なにを考えたのか、

なにを思い浮かべたのか。

質問をある程度繰り返してあげると、様々な答えが出てきます。

なかなか言葉にできない場合も、もちろん多いです。

何れにせよ、「あーもうだめだ。おしまいだ。」と絶望していることに

気付いてもらいます。

本当に「もうだめかどうか」とは別に、勝手に自分の方から「もうだめだ」

「すべておしまいだ」と評価している事に気づかせるのです。

その結果どんな情動・感情・心の変化があったのか、いっしょに探って行きます。

驚き・不安・恐怖・いらだち・悔しさ・怒り・悲しみ・悲嘆などがでてきます。

子供たちにとっては、まだ、こうした情動を表す語彙は、極端に不足している

のが普通ですから、例を挙げながら一つ一つ解説し誘導してあげなければ

なりません。

その上で、こうした情動の嵐から解放されるために、先の、絶望という

勝手な判断にメスを入れていく訳です。

仮に一問落としても、それは部分でしかない。

それに、君が全然手が付けられない問題は、他の子供たちにとっても

難しいはずで、みんなが出来ない問題はないに等しい。

残り時間が少ない、時間が足りない、と思い絶望してしまった場合も同様で、

絶望しなければならない理由など何もない。

仮に全部に手が回らなかったとしても、他の子も同じかもしれないし、

大体、ふだん君が問題を解くスピードは自分が悲観するほど遅くはない。

実際に計測してみればよく判る。

最大の誤りは、試験結果が良かったか悪かったかは、試験が終了してから

判明することで、終わってもいない試験について、自分の方から勝手に絶望

してしまうなんて、なんて馬鹿げたことか判るだろう?

そこでパニックの状態についての科学的な知識を与え、最後に具体的な

対策をいっしょに考えていくのです。

パニックに陥った状態を説明する時に、比較的解り易いと思われるのが

雷の例えです。

雷が落ちて停電になってしまった状態というのは、子供たちもイメージ

し易いようです。

パニックというのは脳の一部分が異常に興奮してしまい、脳全体が正常に働かなくなった

状態を指すのですが、専門的には、扁桃核と言われる部分が異常興奮して、

思考に不可欠なワーキングメモリーが機能しなくなった状態と説明されます。

なんでこんなことが起きるのかと言うと、人間がこれまで生き抜いて

くるのに必要だったからではないかと言われています。

行動を生み出す情動の変化は、通常、感覚器官等からの情報を基に

人類が突出して発達している大脳新皮質と言われる部分で行われる思考や評価

に導かれる形で、大脳辺縁系と言われる部分が反応して起きるとされています。

実はこれ以外に、緊急システムのような仕組みを、私たち人類は持っている

のです。

それは、通常ルートとは別の、感覚器官等からの情報を、大脳辺縁系が直接

入手する裏ルートのようなものです。

この仕組みによって、普段とは比べ物にならないような速さで情動の変化が起き

素早い行動が生み出されます。

これは、爬虫類からアカゲザル、そして人類へと連なる系統進化の中で

受け継がれてきたルートと考えられています。

自分の生命が脅かされるような緊急事態では、逃げるか隠れるか攻撃するか

素早い行動が要求されます。

そのために、ある種の限られた情報に対しては、この緊急システムが作動する

訳です。

ではどんな情報で作動するのか?

それは、大脳辺縁系の底の方にある、扁桃核に貯蔵されている、緊急事態の時の

情動(例えば驚愕・恐怖・激怒など)の記憶に何らかの関連がある情報です。

扁桃核には、様々な情動の記憶が、情報(認識された出来事や事実)と繋がった

形で貯蔵されているのです。

扁桃核は緊急事態だと結論付けると、緊急事態を知らせるサイレンを鳴らし

脳全体を、危機に対応できるように、掌握してしまいます。

サバイバルには非常に有効なシステムですが、一つ問題があります。

それは扁桃核の認識力があまり正確でないということです。

つまり、貯蔵している記憶と関連があるかないかの判断が、個人差もありますが

どうも相当アバウトらしいのです。

ですから結構、誤作動も多いのです。

人によってはしょっちゅう警報を鳴らしてしまう事も起こる訳です。

先のテスト中に現れるパニックなどは、その好例でしょう。

絶望や驚きが引き金となって、扁桃核が危機管理のボタンを

押してしまったのです。

貯蔵された記憶に関連付けられる何かがあったのでしょう。

過去にそうした緊急事態警報発令の経験があったと考えられます。

子供たちには、先の雷の例で話します。

本来、身を守るはずの仕組みが間違って働いてしまって、雷を落として

しまったんだ。

だから、もうそんな間違いを起こさないようにすればいいし、雷が起こした停電は

早く復旧させればいい。

まず復旧の話。

本来、脳の中で例える、落雷による停電状態というのは、一瞬なのです。

扁桃核による脳全体の支配はほんの数秒と言われます。

恐怖と同じような非常に強い情動に、激怒がありますが、この激怒が呼び起こす

暴力行為を激減させ、多くの子供たちを救い、学校や地域を再生させたNGOが

米国にあります。

そのNGOの名前は「シックスセカンズ」と言います。

そうです。「六秒」という意味です。

シックスセカンズでは、「怒りの嵐に襲われたらなにしろ六つ数えなさい」

と教えます。人の名前でも、食べ物の名前でも何でもよいから、

六つ数える準備をしておく事を教えます。

これで確実に嵐は収まるのです。

試験中のパニックでも、同じように対応できます。

深呼吸しながら数秒間、時間を稼げばいいのです。

子供たちには、いろいろ試させます。

呪文(例えば、大丈夫大丈夫とか、事前に考えておいたもの)を唱えたり、

好きな風景を思い出させたり、すきな音楽を思い出させたり、好きな言葉や

自分が元気になる言葉を思い浮かべたりしてみる訳です。

効くものが無いという子には、俺の顔と「逃げるなー!」という、この声を

思い出してみろと試させてうまくいったこともあります。

そうして、扁桃核によるハイジャック状態から、大脳新皮質による

コントロール状態に戻すのです。

大脳新皮質の支配下にあるという事は、意志が働く世界です。

落ち着けたな、と思ったら空かさず、自らを励ますモードにもっていかせます。

絶望の対極の世界です。

希望と楽観の世界です。

コツは時間稼ぎをした時とおなじです。何か呪文なり、誰かの顔なり、

風景なり音楽なり希望や楽観に繋がるものであれば何でもいいのです。

落ち着くことが出来たということだけでも、評価できます。

これで上手くいく。凄いぞ。俺は勝てる。やれる!。と励ますだけでも積極モードに

切り替えることもできるかもしれません。

次は落雷の予防です。

つまり、扁桃核のご作動をいかに防ぐか、という事になります。

それには、大きく分けて二つの対策が考えられます。

一つは扁桃核の過敏なところの修正です。

誤作動する度に、後でその時の状況を再現し、緊急警報の発令は

必要ではなかったとしっかり納得するのです。

以前、お話しましたが、ここでも、「書く」という作業が非常に

有効だと言われています。

どんな場面で、どんなことを考えて、または、どんな感じがして

パニックになってしまったのか。

その後どのように脱出したのか。

これでもう、同じことが起きる心配はない、安心だ。

実際、安心感や落ち着きの情動の中で書き終えるようにするのです。

私の経験上、日記のように何らかの形で文字に出来た子は、例外なく

改善が見られました。

もう一つの対策は、大脳新皮質、特に前頭前野と呼ばれる部分の

機能を強化することです。

大脳新皮質は大脳辺縁系としっかり神経回路で繋がっており

したがって、辺縁系の底のほうにある扁桃核とも、繋がっています。

その回路を使って、新皮質は情動反応を適切にコントロールしている

訳です。

ですから、誤作動は、このコントロール能力の働きが不完全だったから、

とも評価でき、この能力を高めることができれば、誤作動も防げることになります。

どうすれば機能を高められるのか。

結局、価値観や思想の強化ということに密接に関連してくるのですが、

パニックのきっかけとなった、悲観的な見方や

否定的な考え方の吟味を行うのです。

そして、まだ結果が出ていないことに対しては、希望を持って積極的に取り組んだ

方が結果は良くなる可能性が高いし、心配したり悲観したりしても状況が

改善されることはないし、結果は悪くなるばかりであるということをしっかり頭に

刻み込むのです。

同じような場面に遭遇する度に、この価値観、この考え方を

呼び覚ます努力をしていくのです。

時間はかかりますが、必ず進歩はあります。

経験上、もちろん個人差もありますが、指導者が言い続け、本人がこの事を

忘れず実行し続ければ確実に変わっていきます。

このように自らが手に入れたい自分を手に入れていく過程は、即ち、

EQが向上していく過程でもあるのです。

なんと頼もしい、力強い姿ではないですか。